とりとめもないことばかり書いてきました。
福田福朗です。
フクロウを愛する私。
フクロウと共に生きてきた元飼育員の私。
「フクロウを賭けごとの対象にすべきではない」と思い立って、稽古場に潜入いたしました。
しかし、実際は想像とかけ離れた真摯な姿勢でものづくりをしている稽古場でした。
ひとつの作品を育てるということ。
同じ「育てる」という環境で暮らした私だからこそ、なおさら実感できているのかもしれません。
気がつけば私は、この作品に夢中で視線を投げかけていました。
稽古場での稽古最終日。
そんな私の想いが以心伝心で通じたのか。
カワムラさんが、ふいに私の方を向きました。
……わ、笑った?
今まで、見せたこともない表情で、カワムラさんはなにかを確信しているようでした。
この舞台の成功でしょうか。
それとも本番前の苦しい表情が笑顔に見えたのでしょうか。
その答えは、幕が開かなければ分かりません。
刻一刻と初日(プレビュー公演)の準備が整っていきます。
楽屋口には、ずらっとキャストとスタッフの名前が記されています。
1ヶ月、稽古を重ねた稽古場のセットが、解体されてきます。
大勢のサポートスタッフが懸命に働いています。
そして、いよいよ本舞台上にセットが組まれていきます。
ガンガン、トントン、劇場に音が響き渡ります。
部外者の私ですが、感慨もひとしおです。
お、どんどん組み込まれていく。
これは、素敵な装置だ……。
しかし、係の人に見つかり、シアタートラムの外へ追い出されてしまいました。
仕方がありません。
あぁ、この装置をお伝えできないのが悔しくてならない。
本番までおあずけということでしょう。
シアタートラムの出入り口付近の壁には、『フクロウの賭け』のポスター。
そしてまもなく、何人ものお客様が、この扉から作品と出会うことができるのです。
その時を、じっと地球のどこかの片隅で静かに待ちながら。
そう、私は、フクロウ。
もう皆様にお伝えする言葉はありません。
あとは、劇場に来ていただければ分かるはずです。
そして、私は、いつまでもこの作品を見守り続けることといたします。
終わり
by時枝正俊
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