「フクロウの賭け」稽古場から

『フクロウの賭け』

作・演出:川村 毅

●出演

手塚とおる、高橋かおり、飯尾和樹(ずん)、

伊澤 勉、笠木 誠/江守 徹

2006.2.9-19
シアタートラム

「フクロウの賭け」稽古場から 第7回

幼い頃、私はモリケンと呼んでほしいと主張していました。

そう、モリケンとは、「森の賢者」(フクロウの称)の略。

これもフクロウを愛するが故でした。

しかし、「あいつは森脇健児のファンだ」という説がクラス中に流れ出しました。

そんな過去を持つ福田福朗です。

本日も稽古場へ。

最近、気付いたことがあります。

どうやら私は近くへ寄るとあまりモノが見えないようなのです。

近視というやつでしょうか。

遠くのものならハッキリと分かるのですが……。

遠くから、今日も見守る稽古場は段々とカタチになってきています。

そんな稽古場の中でも、やはり目をひくのは紅一点の高橋かおりさんです。

雄だらけのこの稽古場に、しっかりと華をそえてくれています。

その涼やかな声が、可憐に稽古場に響きます。

……あぁ。

求愛は動物の本能。

見ているだけでは物足りず、私は、高橋さんの側に寄っていきたくなりました。

あぁ。その肩にとまりたい。

私は、羽を広げました。

……あぁ。思い出しました。

近くだと高橋さんの顔が見えないのです。

遠くだとその美しい輪郭から、吐息の色までハッキリわかるのですが……。

そんな時、稽古場から、こんな台詞が聞こえます。

「フクロウ、飼ってみたい!」

ホ、ホントでありますか?

福朗とは、私のこと。

貴方さえ良ければ、すぐにでも。

私は飛び立って、高橋さんの側へ寄ろうとします。

……あぁ。しまった。まったく見えない。

遠くなら…大丈夫。見えます。美しい。

仕方ありません。

これが私の生まれもった習性なのですから。

今夜は一人、枕を濡らすことにいたします。

劇場で間近で、凛とした美しさを見ることができる方はとても幸福でしょう。

では、涙が渇いた頃に、また稽古場へ。

……ごきげんよう。

by時枝正俊

稽古場から 第6回
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回

©2002-2006,Tfactory Inc. All Rights Reserved