どうも。俺、福田福太郎。 どうして俺が登場してきたかというと……。
実は俺のオヤジ福田福朗が、どうやら鳥インフルエンザにかかって入院してしまったんだ。
原因は、年寄りのくせに、夜更かしばかりの毎日のせいだ。
注意を促そうとすると「俺は、夜行性だ!」って言い返すんだぜ。
まぁオヤジへの愚痴はそのへんで、今回は俺が稽古場報告。
俺は、親の頼みには弱い性格でさ。
でも、俺はオヤジみたいに、なにかを主張しようなんて、これっぽっちも思ってないから。
ただ、俺はなんとなくやるだけ。
そこんとこ、誤解しないで。
稽古場の片隅でじーっと。
オヤジみたいに気付かれるヘマはしないよ。
あー、いたいた、手塚とおるさんだ。
オヤジに今回は、手塚さんに注目するように言われてるんだった。
あ、そういえば誰かが言ってたな。
「手塚さんは、この<神なき国の夜>シリーズの前作『クリオネ』を経験してるだけあって、今回、カワムラさんの世界へすぐに入り込めてる」
言ってたの誰だっけ……。
ん〜、こんなことも聞いたな。
「手塚さんの狂気の演技には、切なさがある。ただ狂うだけじゃなく、その奥に見える色々なものを観客に想像させてくれる」
どこで聞いたっけ………。
あと、手塚さんのファンって子がいて、喋ってたな。
「手塚さんをテレビでみて、いっぺんでファンになっちゃった。曲者で味のある演技が、すごく好き。でも舞台の手塚さんの方が断然お得。本当にすぐ目の前で、手塚さんを堪能できるんだもん」
あの子の名前、なんだっけ……。
あと、手塚さんの信者って人も、語ってたな。
「近未来の漫画がすごいの」
あ、それはたぶん違う手塚さんだ……。
と、色々思い出そうとしてたら、稽古が終わってしまった。
劇中と同様、俺の頭の中で「記憶の再編集」が行われたようだ。
注:記憶の再編集の意味がよく分からない人は劇場(シアタートラム)へ
どこの誰が言ったか分からないが、『フクロウの賭け』の手塚さんは要チェック。
手塚さんの真骨頂は、ここにありってことだ。
こんなんでいいかい、オヤジ?
by時枝正俊
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