「フクロウの賭け」稽古場から

『フクロウの賭け』

作・演出:川村 毅

●出演

手塚とおる、高橋かおり、飯尾和樹(ずん)、

伊澤 勉、笠木 誠/江守 徹

2006.2.9-19
シアタートラム

「フクロウの賭け」稽古場から 第5回

どうも。俺、福田福太郎。

どうして俺が登場してきたかというと……。

実は俺のオヤジ福田福朗が、どうやら鳥インフルエンザにかかって入院してしまったんだ。

原因は、年寄りのくせに、夜更かしばかりの毎日のせいだ。

注意を促そうとすると「俺は、夜行性だ!」って言い返すんだぜ。

まぁオヤジへの愚痴はそのへんで、今回は俺が稽古場報告。

俺は、親の頼みには弱い性格でさ。

でも、俺はオヤジみたいに、なにかを主張しようなんて、これっぽっちも思ってないから。

ただ、俺はなんとなくやるだけ。

そこんとこ、誤解しないで。

稽古場の片隅でじーっと。

オヤジみたいに気付かれるヘマはしないよ。

あー、いたいた、手塚とおるさんだ。

オヤジに今回は、手塚さんに注目するように言われてるんだった。

あ、そういえば誰かが言ってたな。

「手塚さんは、この<神なき国の夜>シリーズの前作『クリオネ』を経験してるだけあって、今回、カワムラさんの世界へすぐに入り込めてる」

言ってたの誰だっけ……。

ん〜、こんなことも聞いたな。

「手塚さんの狂気の演技には、切なさがある。ただ狂うだけじゃなく、その奥に見える色々なものを観客に想像させてくれる」

どこで聞いたっけ………。

あと、手塚さんのファンって子がいて、喋ってたな。

「手塚さんをテレビでみて、いっぺんでファンになっちゃった。曲者で味のある演技が、すごく好き。でも舞台の手塚さんの方が断然お得。本当にすぐ目の前で、手塚さんを堪能できるんだもん」

あの子の名前、なんだっけ……。

あと、手塚さんの信者って人も、語ってたな。

「近未来の漫画がすごいの」

あ、それはたぶん違う手塚さんだ……。

と、色々思い出そうとしてたら、稽古が終わってしまった。

劇中と同様、俺の頭の中で「記憶の再編集」が行われたようだ。

注:記憶の再編集の意味がよく分からない人は劇場(シアタートラム)へ

どこの誰が言ったか分からないが、『フクロウの賭け』の手塚さんは要チェック。

手塚さんの真骨頂は、ここにありってことだ。

こんなんでいいかい、オヤジ?

by時枝正俊

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