彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。

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■四月某日

No.661

神保町で編集会議。

その後、少し書く。

夜、ラッセルとホテルのなか和食屋で夕食を取る。けっこうばかばか酒を飲む。
■四月某日

No.662

午前中、新宿の映画館で『007ダイアナザーデイ』を見る。この時間帯でけっこう人がいて、みんななにしてるんだろうと、自分のことは棚に上げていう。女子高生の二人組みもいてポップコーン片手にきゃあきゃあいって見ている。

007がおもしろいのはその時代の英米圏の仮想敵がなんであるのかがまんがちっくに把握できることで、ソ連邦の崩壊以後、007は明確な敵を失くしていたわけだ。

そいでもって今回は北朝鮮ときたわけだ。冒頭からボンドが北朝鮮兵士に拷問を受けるわけだ。

イラクやアフガンだとさすがに生々しいとでも思ったのだろうか、英米圏にとってはややお手軽な仮想敵、北朝鮮ということか。

しっかし女王陛下から殺人許可証をもらってるからといって他国でがんがん人殺しやっちゃうところがすごい。

その後、事務所で劇団の年度決算のため税理士と会う。今後の経営についてのシビアな話し合い。

ぼくは青年実業家でもあるのだよ。月刊経営塾だって愛読してるんだよ。自分が資本主義的人間ではないなんて、ただのカモフラージュさ。でもほんと今の日本の構造とは中途半端であいまいなコミュニズムともいえる。ここいらが実に微妙だ。

夜、朝日カルチャーセンター。

その後歌舞伎町の定食屋にいくとヤクザたちが一昨日の歌舞伎町の警察の一斉摘発についてわあわあ話している。今日もフリーの客引きが約一名捕まったと話しているのを聞き耳立てる。

ヤクザに絡まれている夢を見る。
■四月某日

No.663

ラッセルが帰国するので両国のチャンコヤでお別れ会。

久々に登場した宮島、大酔い。相変わらずの宮島酔い。私設キャバクラとでもいいたげに女達に触り、男達に頭突きを繰り返す。

新人達にとってはたまに来て酔って暴れる親戚のおじさんといったところだろう。一年に一回ぐらいならばこの宮島酔いとつきあうのもいい。
■四月某日

No.664

『ハムレットクローン』の公募オーディションの面接。

中身の濃いオーディションだった。さて、今週からの稽古が楽しみだ。
■四月某日

No.665

眠くて仕方がない。

劇団員との稽古。今年はびしびしやる。中堅、新人問わず退団勧告をしていくつもりだ。劇団でいいひとぶっていてもいいことはない。恨まれる覚悟だ。

就職活動のためにきている京都造形大の学生をスタジオ近くの『みのや』に連れていき、馬刺し、桜なべを食べる。

それにしてもゴキブリ退治のCMで太った昔の恋人を泡で潰すのって、これが男女の立場が逆だったら大問題になるのではなかろうか。男だとセクハラにならないのか。それと亭主、父親を馬鹿にしくさるCMが多すぎる。どうってことない女たちがどうってことない男たちにつまらない批評をしているふうにしか見えない。

とつまらない文句をたれている俺は今疲れているのだな。
■四月某日

No.666

祝日。

いっさい活字を離れて休もうと思っているが、この日乗を書いている。

この後、国分寺ラドン温泉にいくつもり。
■四月某日

No.667

カーティス・ハンソン『ゆりかごを揺らす手』を見る。撮り方がちと古いがサスペンスの教科書のような映画だ。

昼、中野へ。山田山子の影はなくほっとする。

夜、新宿紀伊國屋で落語を聞く。小三治がトリ。だがあまりおもしろくない。

休みらしい休みはこれで当分ないであろう。

ところで先週の飲み会で宮島はやたら第三エロチカのこれこれを再演すべきだとかぶっていたが、考えてみるとその全部自分がいい役を演じている舞台ばかりだと気がついた。このおっさんもいいひと顔して要するに役者なのだ。役者は役者であり、世界中で一番信じてはならないのが役者なのである。
■五月一日

No.668

稽古。

CMに島田雅彦氏が出ているが、こうして画面で見ると、若い頃本人が宣言していた通り、見事にエロ中年といった容貌になったと感心する。

でも「でも中身はめっきりー」って歌は自分の小説のことだったりしてね。怒らないでね。
■五月二日

No.669

朝日カルチャーセンター。

夜、『タモリ倶楽部』を堪能する。

二十歳代の頃、富山の劇集団で芝居をやっていた坂本が森を恋しくなったのか白装束集団に合流したという。嘘、嘘、嘘ですよ。ああ、これで多分酒に酔ったときの坂本に殺されるう!呑まないように逃げよう。
■五月三日

No.670

いよいよ『ハムレットクローン』、本格的に始動。

演助の小松と映像のことで打ち合わせ。
■五月四日

No.671

稽古。

美術打ち合わせ。
■五月五日

No.672

世間はGWなのね。もう今日が何曜日かもわからない。

稽古。

もう完璧に演出家モード。

締め切りが迫っている原稿を書くのがつらい、つらい。

音楽の杉浦英治と打ち合わせ。杉浦とは『わらの心臓』以来。新しいCDをもらう。

打ち合わせ後、杉浦とどじょうの『伊世喜』でいっぱいやり、食事をする。

杉浦も立派なおとなになった。

スペインのイビザ島についての情報を聞き、是非行きたいと深く思う。

イビザは村上龍書くところのものとは大いに違い、おとなの観光地だという。

よし、イビザへいこう!

しっかしここ森下スタジオはどじょうも食えるわ、馬肉は食えるわ、うまい魚、煮込みは食えるわ、うまい蕎麦屋はあるわで最高だな!

実に豊かな気持ちで稽古ができる。
■五月某日

No.673

稽古。

執筆。

ぐったり。
■五月某日

No.674

稽古。

そして打ち合わせ。
■五月某日

No.675

午前中から打ち合わせ。

稽古。稽古中毒の様相が帯びてくる。
■五月某日

No.676

稽古。今日でキャスティング、ワークショップ、第一ステージ終了。

メンバーが絞られることに。

まったくやる気が出なかった原稿書きに取り掛かる。ちょいと調子が出始めた。

ウィスキーでクールダウン。

確かに春の木々の香りは精液の匂いに似ている。
■五月某日

No.677

稽古はないが、原稿書き。上がったので一安心。

カーティス・ハンソン『ワンダー・ボーイズ』を見る。この人は語り口がうまい。どうってことないのだがついつい引き込まれてしまう。これも面白かった。昔、監督の名前も知らずに見た『窓/ベッドルームの女』の記憶が今また蘇る。『L.A.コンフィデンシャル』はニューヨークで見たのだが、同じ監督と知ったのはつい最近で、その事実に感動した。『L.A.』もまたたっぷりとした映画だった。
■五月某日

No.678

第二ステージの始まり。

稽古後、花園神社の赤テントヘ。この日は空気が乾燥していて絶好のテント観劇日和だ。

終了後、恒例のテントのなかでの宴会。

唐のおとっつあん、大酔い。最後はロレツがまわらなくて何いってるのかわからない。いろいろな人がそれぞれの姿態で酔っ払いだし、子供の頃つき合わされた親戚との新年会のようだ。幼少期、これに鍛えられてしまったせいで私は酔っ払いあしらいが上手くなったのだ。とにかくここの劇団員は稀代の狂人とつきあい続けていてホンットえらい。
■五月某日

No.679

稽古。

原稿の推敲。

東京スポーツの記事で元投手の江夏豊が球場の場外で歓声を聞くのが好きといっていたという記者の記事に静かな感動を覚える。

江夏という人はこれだから侮れない。

場外で耳にする歓声というのは何か独特な味わいがある。私もそれを知っている。

プロレス会場でメインの試合中たまたまトイレに立ったときもこれを体験した。

誰もいないロビーに中からの大歓声が響いてくる。

なんともいえない快感がある。ああー、いいよなあと思うのだ。
■五月某日

No.680

昼間モーローとして歩いていて、定食店の店先の看板の「らんちタイム」が「うんちタイム」に見え、はっとして立ち止まる。

稽古後、『シカゴ』を見る。まあ、こんなところだろうといった映画。いいけどね。

その後、新宿のスペイン料理店で夕食。

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