彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。

バックナンバー 最新

■四月某日 No.961
渋谷で『花と蛇』を見る。くたびれているので諦めようと思っていたのだが、見てよかった。

これはまぎれもなく、セックス・ムービーの傑作である。ポルノ映画、エロ映画という言い方がしっくりこない感じがするので、この言い方を使う。

しかしこの映画には日活ロマンポルノへのオマージュが随所に感じられる。

ある種荒唐無稽なチープな展開。

湿気に満ちた性描写。

妄想と現実の交錯。

堂々たるセックス・ムービー、世界に誇れる出来だ。

それと従来のポルノ、ことにAVにおいてはやたらと長まわしのセックスシーンが退屈でしかたがないのだが、『花と蛇』では撮影で二台のカメラを同時にまわし、スピーディに編集、スイッチングされているので臨場感が保たれ、まったく飽きない。

本当のSMマニアにとってみれば、まだまだだという向きもあろうと想像するが、私みたいなトーシロにとっては描かれた緊縛シーンは美しいものだった。

これまで石井隆の映画にはあまり満足せず、というのは劇画時代の本人には及んでいないと思っていたところ、今回石井氏は見事に映画監督として腕をあげたものだ、と感じ入る。

とにかく徹底した、しかも確信犯的な反フェミニズムの映画であり、あたまにきた女性達はぜひ反攻ののろしをあげてほしいものだ。

杉本彩はりっぱだった。捨て身になったとき、女は女優になる。女優になるということはなにかを確実に失うということだ。そのことがわからなければ女優志望は永遠と志望に留まるしかないだろう。

それにしても、このイメージフォーラムでさらに『ヴァンダの部屋』も見たいし、土方のドキュメンタリーも見たい。

見終えて、かつて東電OLが殺害された神泉駅周辺を歩き、劇作家協会の理事会へ向かう。

会議後、イラクの人質ふたりが解放されたと知る。

■四月某日 No.962
だらだらと休むが、明日より稽古開始のため、いろいろ電話があったりと落ち着かず。
■四月某日

No.963

『クリオネ』、ワークショップ開始。

戯曲をもとにいろいろな役をいろいろな人にふってやる。

つまりこのワークショップは徹底して台詞についてだ。

実におもしろい。

まあ、いろいろなワークショップがあるが、私がやらされて今まで一番嫌だったのは即興、インプロってやつ。バカくさくてやってられない。それで演出家は見ているだけで(当たり前といえば当たり前だが)、いろいろ御託を並べる。自分も汗かけよお!といいたくなる。

■四月某日 No.964
二日目。

ところで先週の私の『花と蛇』評について、周囲の女性群に非難ごうごうである。

いやあ、あの映画はあまりまじめに見てはいけないのよ。

だって最初、杉本彩が悶えていて、CGの蛇が出てきて杉本の口に頭をいれてきて、それで『花と蛇』ってタイトルが出るというこの出だし自体大笑いなんだからさあ。

このことで山田山子に呼び出される。

「杉本彩がいいなんて、あんたの女のセンス疑うわね」

「いやいや、いいなんていってない。よくやったといったわけでして」

「単なる露出狂だろがっ」

「まあ、それもそれでたいしたもんじゃないんだろかと思うわけです。人類皆露出狂になれるわけではないのですから」

「あんた、露出狂好きか?」

「出し渋りよりはいいけど。でも、石井隆のヒロインちゅうのはあまり実物の女優さんでは難しいんですよ。劇画の奈美みたいな実物はなかなかいない。確かに杉本彩は雰囲気不足ですが、雰囲気のある女優さんを選ぶと今度は体がいまいちだったり、中途半端な脱ぎ方しかしなかったりするわけですよ。だからトータル的には杉本でよかったと思うわけですよ」

「でも、あんた、知ってっか、杉本彩、今おめえ何様状態の勘違いで、いっちゃってるぞ」

「まあ、ありがちなことですね。では、さようなら」

と私は脱兎のごとく逃げる。

中野の夜である。

■四月某日 No.965
昼間、なんとか時間をつくって『ヴァンダの部屋』を見る。

いやはや、見てよかった。しかもこういうのは映画館で見ないと。家でビデオで見ても集中力を欠いてしまう種類の映画だ。

グループ分けをする。

■四月某日 No.966
稽古。

この公演はあくまで途中経過報告なのであるから完成を求めないといいつつ、たまに求めようとする自分を抑える。

■四月某日 No.967
原稿書き。

午後、新宿の蕎麦屋でもりを食べているとタモリ氏が入ってくる。三人のおつきがいる。挨拶しようと思ったが、やめる。

稽古。

稽古をもっと増やしてほしいという声が俳優諸氏からあがり、稽古時間を延ばす。

稽古場は活気に満ちている。

曜日の感覚は失せ、『タモリ倶楽部』を見るのを忘れる。昼間会ったというのになんということだ。

■四月某日 No.968
稽古。

下のスタジオで同様に稽古中の小林勝也氏現れ、飲み会の算段などする。

■四月某日

No.969

稽古。
■四月某日 No.970
稽古後、小林氏を含めてみんなとわいわい飲む。
■四月某日 No.971
いろいろと稽古する。
■四月某日 No.972
リーディングの稽古等々。
■五月一日 No.973
文学座チームのリーディング。
■五月二日 No.974
日芸チーム、第三エロチカチームのリーディング。

乾杯。

お客さんにもひとつの役を違う人がやるとこれだけ変わるものかといったことなどが伝わり、私自身、おもしろく、贅沢な戯曲完成への過程を持っていると思う。

参加している俳優諸氏はみな頭がよく、大人である。

酔っ払ってよろよろと帰る。

■五月三日 No.975
ひさしぶりの休み。

だらだらと過ごす。

■五月某日

No.976

とにかく俳優諸氏の希望で稽古時間が長くなり、1チーム四時間、一日八時間の稽古でまいる。

加えてヴァイオがウイルスに感染。かわいそう。

■五月某日 No.977
八時間稽古。

ぐったり疲れる。

さすらいびとさんに来てもらい、ウイルスを除去してもらう。

■五月某日 No.978
八時間、稽古。

もうスタジオは道場と化していて、熱気むんむんだわ。

ヴァイオ、やはり調子悪い。

近所のモロッコ居酒屋で原島氏らと飲む。

■五月某日 No.979
ゲネの後、いよいよ文学座チーム、初日。

なかなかの出来であった。

終演後、乾杯。わいわいと騒ぐ。

■五月某日 No.980
日芸チーム。

よくぞここまできたものだ。私は最初もうお手上げでばんざいだったのだが。

再び、さすらいびとさんに来てもらい、ヴァイオのチェックのために手渡す。一日入院ってところだ。

終演後、秋に横浜でやるワークショップのための打ち合わせ。

©2002-2004,Tfactory Inc. All Rights Reserved.