彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。

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■一月某日 No.881
元気が出ている。元気良く授業。

放課後稽古。

卒業制作の舞台を見る。

明日は大雪とのこと。東京に戻れるだろうか。

■一月某日 No.882
雪はない。

新幹線では途中名古屋では雪、降っている。

突然川端の『雪国』を読み出し、一気に読む。いまさら私がいうまでもないが、いい。十代の頃も一度読んでいるのだが、そのころ理解していたわけがないと実感。読書というのは若いころ読んでいても読んでいるとはいえないものだ。

■一月某日

No.883

世田谷パブリックで『だれか、来る』を見る。

ラーメン食べて帰る。

■一月某日

No.884

中野の美容院へ。『青葉』でラーメンを食べて、新宿で『ドラキュリア2』を見る。ウエス・クレイブン制作である。それだからというせいもあったが、この手のチープなホラーはもともと好きなのだ。おもしろくもないがつまらなくもない。

新年早々身辺様々なることで実に騒がしく、だ。まあ、今年も平穏な日々とは程遠いのだな。

■一月某日

No.885

京都で授業。

今年一番の寒さ。北白川はとりわけ寒く、歩いていると冷気で涙が出てくる。まるでニューヨークの冬だ。

三年生の二月の発表は『ロスト・バビロン』だが、今年はなかなか役者が揃っている。去年はスタッフ気質の学生が中心だったが、今年はキャストで見せることができそうだ。

放課後も稽古する。寒さのためうろうろする気もせず、まっすぐホテルへ帰って『エースをねらえ!』を見てしまう。続いて『白い巨塔』。テレビっ子ねっ。

暖房を入れての部屋でなかなか寝付けず。

■一月某日 No.886
中山美穂、パリで出産のニュース。かつて「岸田賞作家と芥川賞作家、どっちをとるんだ」という迫り方をしたのが悪かったのだと、過去を悔いる。って嘘よ、嘘。

大学のショップで油彩の絵の具、キャンバスを買う。小学生の頃、やっていた油彩を今年復活しようと思っている。実家に問い合わせると、当時のままの油彩の道具があるいうので母に郵送してもらうと、きれいに保存されていたのだった。

終日ぼんやりとしたまま『ロスト・バビロン』の稽古に励む。

飲もうとも思ったが、寒くてホテルへ直帰。なんだか結局正月気分がまだ抜けてないのかも知れない。

■一月某日 No.887
帰京。

キャンバスに絵の具を落とす。三十数年前の絵の具、ペインティングオイルが生きているのである。絵に没頭する。

■一月某日 No.888
神楽坂の鳥屋でピーターのお別れ会。他にサラと慎太郎。

慄然とさせられる情報を得る。

■一月某日

No.889

小学館で編集会議。新編集長にあいさつ。

第三エロチカの総会。劇団もぼちぼち過渡期を越えて新しい面持ちで復活しなくてはならない。時間がもう少しかかるだろう。なんせ今時まだ劇団などやっているのだ。この時代にだ。しかも役者志望の集まりである。簡単なことではない。内部はさらにすっきりしなければならない。大人数はいらない。

■一月某日

No.890

年末、歯の被せがとれたので歯医者に行く。食べている最中、被せが取れるときの感じは実に心もとない感触がして、嫌なものだ。時折歯が抜ける夢を見るが、この嫌な感じが甦る。

歯医者、脂で汚いから掃除もしようとのたまう。

京都へ。

■一月某日 No.891
『ロスト・バビロン』の稽古。

放課後稽古の後、海象、伊藤さんらとギョーザの『王将』で深夜まで飲む。酔って舞台の教師連の物真似をする。

■一月某日 No.892
帰京し、朝日カルチャーセンターへ。ここでは最新作『バラード』を扱う。

レイト・ショーで『シービスケット』を見る。つまらない。まず馬の撮り方がいいと思わないし、人物の書き方も浅い。しかも語り口が下手だから長すぎる。なんでみんな褒めるのかわからない。この手のはテレビ映画で十分だ。このようにテレビで十分な映画ばかりだ、アメリカ映画のドラマ系は。飛行機で見るのにちょうどいい映画だ。

■一月某日 No.893
去年の年末急逝された藤木宏幸先生を送る会、学士会館に赴く。氏とは直接話したことはないのだが、資料の面でお世話になった。親切で紳士な方であった。

会場で元気になった藤原さん、清水邦夫氏、そして高橋いさを氏とひさしぶりに会う。高橋氏と困難な人生について語り合う。

その後、『ランチョン』、東京書店、『ラドリオ』とはしごする。

そして『ミスティック・リバー』を見る。素晴らしい。しかしみんな褒めるからあえて苦言を呈すれば、やや感傷に流れているところがあり、それはイーストウッド本人が担当したらしい音楽のせいだと思われる。それにしてもこの深さはどうだろう。長くても『シービスケット』の長さとは違う。しかしアメリカ映画はアメリカ映画だな。妙につじつまが合いすぎる。ヨーロッパ映画の理不尽さが恋しくなることも確かだ。酒屋のオヤジ役イーライ・ウァラックというキャスティングが泣かせる。『許されざる者』のリチャード・ハリスってのもなかなかだったけれど。

残念だけどアカデミー賞、渡辺謙無理だろうな。『たそがれ清兵衛』はすっとぼけて取るかもしれないが。

なんかキダムって一年中やっている印象を受けるのだが。

■二月一日

No.894

洗濯に掃除。

油絵を描く。様々な色の絵の具に囲まれているとささやかな幸福感に満たされる。

■二月某日 No.895
原稿書き。歯医者。雨で冷たく寒い日。
■二月某日 No.896
終日キャンバスに向かう。
■二月某日

No.897

銀行に行って雑事をいろいろ。

新宿の生命保険会社に行って色々と手続きを済まして、死亡だなんだと説明を受けているうちになんだか心臓がちくちくしてきた。

映画館に行くと見たいと思っていた映画はまだやっていなかった。

夜、キャンバスに向かい、ウイスキーを飲む。

■二月某日 No.898
昼メロの『牡丹と薔薇』はたまたま目にして以来、けっこうはまっているのだが、たまに濃過ぎて嫌になる。

原稿を書く。

バッティングセンター90球ひっかける。

久しぶりに近所の耳鼻科をひっかけると、「あら川さん、最近お見限りじゃない」とパートのおばはんたちに囲まれる。

サウナに行って寒い中を歩いて帰ってくると具合が悪くなる。

『白い巨塔』を見る。なんかだんだん飽きてきた。

■二月某日 No.899
原稿書き、小茂根のサイスタジオで『海ゆかば水漬く屍』を見る。
■二月某日 No.900
イーストウッドの映画のなかで唯一見ていなかった『マディソン郡の橋』を見る。予想通りの映画。

深夜、書きかけの油絵の自画像、完成間近ながら気に入らず、塗りつぶす。

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