彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。

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■十二月某日 No.861
寒くてなにもやる気がしない。

テレビで志村けんの番組で狸の格好をした上島竜兵に大笑いする。

ポンポコポンポンポーンというフレーズを終日口ずさみ、そのつど笑う。

『アカルイミライ』を見る。本当に黒沢清の映画でつまらないものはない。処女作『神田川淫乱戦争』がそうであったように、都会における川が見事に描かれている。ただガキどもへの無防備な秋波の送り方がこの映画では嫌なところだ。

■十二月某日 No.862
暖かい。元気にそうじ。

夜、『ハムレットクローン』の俳優達による、なぜかスタッフは排除されていて大不評の忘年会に行く。

■十二月某日 No.863
そうじ。雑念、煩悩多し。

新宿のアドホックの文房具階がすでに八月付けでなくなっていることに衝撃を覚える。

加賀屋の福袋を買おうかどうか迷い、結局やめる。

夕刻、『マトリックス・レボリューションズ』を見る。まったく期待していなかったせいか、『リローデッド』よりはおもしろい。でも馬鹿馬鹿しい。

■十二月某日

No.864

暖かい。調子がいい。バッティングセンターで九〇球ひっかける。

神楽坂を散策し、相馬屋で原稿用紙200枚を買い、来年に備える。

吉野家、牛丼販売中止の報に静かなショックを受ける。

■十二月三十一日

No.865

大晦日。

老いたる母を連れて熱海の温泉に。海の見える角部屋。

湯船で毒蝮三太夫を発見する。

夜、紅白、K―1、プライド、猪木祭りを激しくザッピング。

曙、サップ戦を見て安心して風呂へ。

曙の不思議な倒れ方が印象的だった。それにしてもなんかこの試合、サップも基本的に下手くそだから、なんか教室でふたりをいじめてけしかけて殴りあいさせているみたいだったな。曙、女房子供は連れてくるなよ。

■一月一日 No.866
日の出を見ようと早く起きたもののなかなか出ないのでまた寝てしまい、見逃す。

暖かくて、体調すこぶる好調。

伊豆山神社に向かう五百幾つの石段、権現坂を上る。

熱海駅周辺で買い物をし、蕎麦を食べて電車に乗る。

夜の高田馬場、しんとした界隈を散策する。

■一月二日 No.867
死んだ父の夢を見る。

こっちが出さないせいだろうが、年々賀状が減ってきてさみしいことこの上ない。みんな、私は出さないけど私には出すように。

だらだらと過ごす。落語ばかりを聴く。

■一月三日 No.868
引き続きだらだらと過ごす。

所沢に出てCD三枚買う。寿司を食べると急激に眠くなり、歩くのさえつらくなる。

■一月四日

No.869

高田馬場で本を買い、入院している祖母を見舞う。

その後、親戚の家へ。ここでも眠くて仕方なく、なんにもしゃべらない人になる。ほとんど廃人。よろよろと帰る。

■一月五日

No.870

廃人状態が続く。

12時間眠る。が、雑煮を食べると再び眠くなり、寝る。

起きると急に元気が出て、バッティングセンターに向かい90球ひっかける。

去年見逃していた『シティ・オブ・ゴッド』を借りてきて見る。

すさまじいおもしろさだ。興奮した。『キル・ビル』と同様『仁義なき戦い』の影響を受けているが、このブラジル映画のほうが数倍高級だ。

昼間、あれだけ寝たのだから眠れないと思ったらすとんと寝入る。

■一月六日

No.871

ぼちぼち仕事始めなければと年末に送られたゲラを読む。

廃人のときにはまったく手をつけなかった煙草を久しぶりに飲む。活字を前にすると煙が必要になるのだ。煙を吸い込むごとに現実界へと立ち戻っていく自分。

夜、サウナで汗をかく。

■一月某日

No.872

年末の『ザ・ベストテン』の松田聖子にはまいった。ああした女王様ぶりが今やまるで無効であることがわかっていない。サヤカは出すだろうと予想できたが、今の自分のペット原田真二まで出してどうする。当時の聖子さんが好きだった乗り物はなんでしょう?というクイズに「神田正輝」と人が答えられる雰囲気と、そのジョークにキャッキャッと笑えるキャラクターこそ必要なのに。「郷ひろみ」じゃ洒落にならないだろうけれど。

とにかく前に聖子とサヤカがカレーのCMで「ウチ来る?」ってのやってたけれど、行きたくない、食べたくない。

そういうわけで、正月ボケのままよろよろと新幹線に乗り、京都に向かう。途中の熱海駅で下車したいと思う。はたらきたくにゃーい!

■一月某日 No.873
授業。午前午後。放課後も稽古。

『白い巨塔』を見るので弁当を買って早々とホテルに帰る。

ワルシャワロケってのがしぶい。パリとかニューヨークは難しかったのか。テロ厳戒のせいか、はたまた予算のせいか。しかもポーランドにいったからってオマケのようにアウシュビツロケをやるところがすごい。

唐沢と江口、両者ともイヌ顔なのだが、唐沢のドーベルマン顔に対して江口のテリア顔の対比が合っている。

■一月某日 No.874
雪である。寒い。

授業。放課後も稽古。

研究室でひとりで『白い巨塔』ごっこをやり、静かに顰蹙を買う。

山田先生クラスのダンス公演を見る。

ホテルでゲラ読み。

■一月某日 No.875
帰京。

夜、シングルモルトを飲む。

■一月某日

No.876

二日酔い。さみしい気分。
■一月某日

No.877

終日ゲラと格闘。

正月気分抜けず、加えて寒くて元気のないことおびただしい。

夜、親戚の子供から送ったプレゼントの礼の電話がかかってくる。心なごむ。心が少し暖まる。

■一月某日

No.878

新宿でピーター・エッカサールのインタビューを受ける。

本当に寒い。元気なし。湯治でひきこもりたいものだ。

■一月某日

No.879

そういえば、たまたま目にした大河の『新選組!』ってなんか新春かくし芸大会のなかのドラマみたいだったな。

山の上ホテルでゲラを渡し、そのまま新幹線で京都へ。

京都はちらちらと雪が降っている。

■一月某日 No.880
授業。

夜、『ラスト・サムライ』を見る。渡辺謙、真田広之をはじめとする日本人俳優達がすばらしい。トム・クルーズがせいぜい利賀村に来るアメリカ人ぐらいにしか見えない。

それにしても渡辺謙一派が住む山村がどうしてもアフガンの山岳に見えてしまう。今はなき『映画芸術』の小川徹が得意とした裏目読みをすれば、これは日本人の内戦の光景を借りたアメリカ人のアフガン爆撃、バクダッド爆撃への贖罪の映画なのではないか。

それにしてもいかんと思いつつ泣いてしまった。渡辺が見事だった。

その後、木屋町の店でおばんさいを食べ、先斗町のバーで酔っ払う。思った以上に長居をしてしまい、小腹が減っているのが、店がほとんど閉まっているで深夜喫茶に入ってカレーを食べる。ほとんど大酔いにての行動。

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