ハムレットクローンドイツ公演レポートスペシャル版!!

〜現地報道の様子など〜


撮影:宮内勝(五点とも)

Hamlet Clone world premiere!! 『ハムレットクローン』ドイツ公演は、2003年9月12から23日にかけて、ハンブルクなど四カ所を巡る記念すべきツアーとなりました。国際演劇祭Laokoon(Kampnagel summer festival)をはじめ、各地の演劇祭に参加、その様子はたびたび、現地の新聞に大きくとりあげられました。

「現在/東京/ハムレット」をテーマに、新世紀ハムレットクローンとしてよみがえった2003年版。2000年初演の作品をベースに、舞台の全てを一新、さらに研ぎ澄まされたものになりました。セゾン・シアタープログラムとしての東京公演(2003年6−7月)、そして勇躍挑んだドイツ公演は、すでに英訳、仏訳がなされ、各地でリーディング・ワークショップが行われているこの作品の新たな飛翔となりました。

Sep.12-14.2003 Hamburg公演
ハンブルクの会場はヨーロッパ有数の国際的現代芸術センター、カンプナーゲル。実験的な作品から世界的なアーティストまで、そのプログラムの多様性は、創造的・革新的であるという評価を確固なものにしています。夏の国際演劇祭には各国より10カンパニーが招かれ、T factoryはそのトリを努めました。

  「Hamburger Abendblatt」
(ハンブルガー・アーベントブラット)紙

2003年9月15日号より抜粋

日本のティーファクトリーは、囚人服を着た檻の中のハムレットを、シェイクスピアとハイナー・ミュラーをふまえ抑圧のメカニズムとして幻覚を映し出す。蜂起やユートピアなど、「ハムレットクローン2003」では破綻する。

  「Hamburger Morgenpost」
(ハンブルガー・モルゲンポスト紙)

2003年9月15日号より抜粋

グループ「ティーファクトリー」は「ハムレットクローン」を上演。これも未知の形だった。登場人物はなじみのもの。ハムレット、クラウディウス、オフィーリアなどなど。殺人、復讐、狂気 − 。これらが起きるのはデンマークではなく、東京が舞台なのだ。新たなる寓話は、戦争、死刑、売春というもの。11シーンにより、根本まで腐りきった社会が描かれる。泥棒が「ハムレット」を演じたいと夢見て、いずれ狂い、通り魔を犯す。舞台上で身体はひきつり、舞台は黒い檻が並んでいる。ほぼ人間でなくなったような存在が観衆の前に立つ。少しSFのアクセントあり。劇団が諷刺をこめ自己戯画化するという演劇性により、喜劇さえ生まれている。残酷な、恐怖の光景である。

Sep.17.Bielefeld公演

ビーレフェルトではシアター・ラボ主催の国際演劇祭に参加しました。同劇団創立20周年記念で2ヶ月30団体招聘のフェスティバル。足踏みが響きわたるお客さんの熱狂ぶりに出演者・スタッフ一同びっくりするやら感激するやら。熱心に仕込みをしてくれた劇団員のみなさんにも感謝。
  ビーレフェルト
「Neue Westfaelische Zeitung」
(ノイエ・ヴェストフェリッシェ・ツァイトゥンク)新聞

2003年9月19日号より抜粋

古典作であるハムレットの脚本を、現代の劇作家である川村毅は、ハイナー・ミュラーのアレンジである「ハムレットマシーン」(1977)により補完している。「ハムレットマシーン」は終末感に満ちた作品で、70年代の東ドイツと、憧れのドイツ統一というだけでも強烈な話であったが、木曜日にTheaterlabor(演劇実験室)でティーファクトリーが上演したバージョンは、(現代)日本的要素を多分に含むことで、非常に高速で強烈な印象を残したのだ。

Sep.21 Halle公演
ツアー3番めの地、ハレーの会場は、なんと駅の構内。60団体参加のフェスティバルを主催した、ターリア劇場のスタッフのみなさんが当日の早朝から仕込みをしてくれました。無事に終演を迎え、満席の客席からは鳴りやまぬ拍手、数度のカーテンコールで応えました。
  Mitteldeutsche Zeitung
(中央ドイツ新聞)より抜粋

ティーファクトリーは、ダンス的に、表現豊かな美を、(我々の目にとって)猛烈な最高速で演じ抜く。硬質で高速のシーンが、ビジュアルの美と歩調を合わせる。折にふれ、ぎりぎりのことまで挑まれている。境界とその越境がここにある。あるシーンでは、少女3人が舞台前面に並び、まったくイノセントにパンティを脱ぎ、視線は空に固くむけたままおしっこの動作をする。このアジテーションの効果は大きい。この瞬間、観察者は消費者の役を演じることを強いられるのだ。

最終場面では、全出演者が自分の鉄格子を押す。ハレという土地は日本には無い。しかしハムレットはどこにだっているのだ。

Sep.23 Suhl公演

ツアー最後は南チューリンゲン・ズ−ルの町。立派なホールを埋め尽くした、500人を越えるお客さんの温かい拍手に包まれて、ファイナル・カーテンコールを迎えました。
  「Freues Wort」
(フライエゥ・ヴォルト=自由言論)紙

2003年9月24日(水)号より抜粋

これはハムレットなのか?日本の監督川村毅が昨夜CCSで演出した作品は衝撃的で素晴らしく、かつハムレットだったのだ。

ズール発 「クローンされたハムレット=ハムレットクローン」が川村の作品タイトルであり、一度だけの舞台がズールで上演された。530人の観衆が見たものは、ハムレットであり、ハムレットではないものであった。シェイクスピア作品の翻案は、ドラマでありつつも、頽廃した社会の不道徳な衣に包まれていたことを述べねばならない。

80分の上演後、人間存在の奈落から観衆は解放され、ハムレットを確かに体験した、あるいは体験しなかったのだ。

(翻訳:前田智成)

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