●ハムレットクローン稽古場レポート その3
ハムレットクローン。まもなく「本番」初日。
「本番」という文字が目の前でチカチカと点滅しはじめている。これ程、「本番」がふさわしい作品はないなと、ふと思う。1999年のワーク・イン・プログレスからはじまったハムレットクローンは、いつの時代もその社会と対峙し続けた。
川村氏の眼にうつる「東京」が、推敲という作業により作品にどんどん反映された。今回のハムレットクローンも、「現在」のハムレットクローン。そんな歩んできた道のりと作品の意味合いも含め、「本番」を迎えるという言葉がじんわり胸の奥に響いてくる。
長く続いたハムレットクローンも今回の公演で、ひとつの完成形を迎える。是非、この時代を生き、闘い続けるハムレットの「本番」を、皆さん自身の眼で確かめて欲しい。
ハムレットクローンが動く時
〜振付師・飯田陽子先生に聞く〜
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言葉だけではなく身体が訴えるもの
よくトレンディ・ドラマの中で女の子が、「言葉で言わなきゃ分かんない!」のような台詞を喋っていますが、時々「そうでもないよ」と突っ込んでしまいます。ハムレットクローン稽古場に通う度に、その感覚は確信に近くなっていきました。
そう、ハムレットクローン台詞ももちろんありますが、加えて「動く」芝居です。役者さん達は小屋いっぱいつかって動き、移動し、威嚇します。言葉?ノンノン。それだけじゃ足りない。ハムレットクローンは、身体で伝えるなにかがあってほしいお芝居です。
その身体の動かし方を指導するのが飯田陽子先生。飯田先生がいらっしゃると、稽古場が「飯田先生がいらっしゃった時用の雰囲気」になんてなる事はありません。神に誓って。ただ、「飯田先生から見られる事」に対するいつもと違う緊張は確かにあります。いつも素敵な笑顔でテキパキと指導する飯田先生のパワーは、稽古場の空気を「動」かします。今回は、その飯田先生にその素敵な笑顔の秘密と、ハムレットクローンに対する想いを聞いてきました。
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Q 飯田先生は、去年の2003年版の振付も担当されていましたが、今回のバージョンで意識されている事は、なんでしょうか?
A 場所が狭くなったので、コンパクトでありながら、去年と同じ、またそれ以上のテンションを保ち続ける事です。
Q 振付を考える際、苦労された事がありますか?
A あんまりないです。川村さんの台本を読んで、稽古場に行くと、自然にどう動かすのか浮かんでくる感じです。
Q その事で川村さんと意見が食い違ったりしませんか?
A 全くないですね。そもそも、あまり言葉を交わさず、打ち合わせはほとんどやっていません。それでも作品として、組み合わさっていきます。そんな緊張感が私にとって非常に心地良いです。
Q 振付を思案される中で、一番気をつけている事はなんですか?
A そこにいる役者さん、ダンサーさん達が生きる事です。カタチとかよりも、そこに居る空気とかも含め、全体として立ち上がっているかどうかを注意します。
Q 逆に、役者さん達側に気をつけてほしい事はなんですか?
A 「こんなもんだろ」「こんな感じ」とか、そういう曖昧な感覚ですね。若いとか年齢をとってるとか、ベテランだとかアマチュアだとかは関係ない。ずーっと遠くに越えなければいけないものがあるので、それを見続けていく、挑んでいく姿勢が大事だと思います。どんな些細な動きでも意識し、目標を持ってほしいですね。
Q 実際、踊りが専門ではない役者さん達を指導するのは、しんどくなかったですか?
A とんでもない。大変面白かったです。テクニックがついていないバラバラの身体をいじるのは好きなので、楽しませてもらいました。「ありがとう」と言いたいです。
Q では、踊りが専門のダンサーさん3人についてお聞きします。この3人をなにかに例えていただけますか?
加藤安奈さん…ねずみ花火 (飯田先生談→エネルギーが一杯)
JOUさん…線香花火 (〃→細さの中のパワー)
柊アリスさん…燃えるヘビ花火 (〃→不思議な妖艶)
Q 最後にハムレットクローンにとって、「動」の部分は、どういった要素を担っているとお考えですか?
A あえて身体をつかった事で生み出す事ができる。「これ以上」でも「これ以下」でもない必然的な存在だと思います。少なくとも今回のハムレットクローンにとっては。
もっと大きく言えば芝居もダンスも、そういう枠組みは関係ないんです。そこに身体そのものがある事が重要なんです。
インタビュー終了。今日の稽古で飯田先生がおっしゃっていた「言葉だけじゃなくて身体で訴えていきましょう」という言葉の源が、垣間見られたような気がしました。飯田先生、ありがとうございました。
見逃せないぞ!ハムレットクローン。まもなく初日を迎えます。
構成:時枝正俊
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