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手塚とおるさんに聞く 聞き手:時枝正俊 |
人によっては、このシチュエーションは可笑しいと思う人もいるし悲しいと思う人もいる。同じ状況なのに違う側面を見たりする人達と一緒にやってみたい。 −そう語る手塚とおるさんは、現在様々な作家や演出家の舞台で活躍している。これだけ多様な作品に出演する中、役作りとかは大変なのではないだろうか。 役作りはしない。なんかもう科学反応で相手がこうだから、こうとなってしまう。 −なるほど。僕が稽古場で手塚さんの演技を見て、毎回演じる度に呼吸の音まで変わっていると感じるのはそれ故かもしれない。稽古後の手塚さんは、温和な笑顔でインタビューに応じてくれたが、その笑顔がある意味怖かったりする。それは、手塚さんの『クリオネ』で演じる首塔聖人役の「異様さ」が関係しているのかもしれない。では、手塚さんから見た首塔ってどんな男です? 首塔はヘンな人です。でもまぁ僕も狂ってるんで。 −そう言ってニヤッと笑う手塚さん。やっぱりなんだかゾクッとする。 首塔という役を、極端に共感できるできないの次元で考えてはいないんです。人というのは欠落してたり欠落を埋めてたりでバランスをとっているので、そのバランス感覚が首塔は人よりズレてる感じかな。普通の人は、そこでバランスをとろうとするけど、この男はバランスがとれないまま生きてきている。 −バランス感覚。手塚さんは、とれていますか? とれてないです(笑)。もう僕はホントに。でも、せめて芝居ではバランスをとろうと頑張ってます。 −そんな芝居中では、バランスのある巧みな演技力で観客を魅了して止まない手塚さん。川村作品は一昨年の『AOI/KOMACHI』から二度目である。手塚さんが思う川村作品の魅力とはなんなのだろうか。 川村さんは、言葉とか文ですね。句読点がない文がザァーって続いてたりするのを句読点がないままの音で喋ったら面白いなぁと。または、これは句読点がないんだけど区切ってしゃべった方が良いのかなぁとか。そういう意味で物凄くイマジネーションが沸く言葉を書いているので。そこが楽しいですね。 −よーく分かります。僕も川村氏が、この日本では、感性をいたく刺激してくれる数少ない劇作家の一人だと思います。 作家の書く言葉を僕の声で喋るというのがとても気持ちが良い。それは、役者の独特のオーガズムというか、ある意味エロチックでもあるというか。色んな人の言葉を自分の言葉で喋ってみたいという欲求が僕にはいつもあります。 と語る手塚さん。そして、こんな表現を使う。 戯曲は楽譜みたいなものだと思うんです、モーツァルトだったらモーツァルトを演奏するんだけど自分なりの演奏があって弾く曲は同じ曲なんだけど、自分なりにアレンジを加えて……、楽譜通りに弾いても成立はするんだけど、どう自分が面白く演奏できるか。川村さんの楽譜は、演奏していてとても楽しいですね。 −そういえば川村氏は、学校の音楽室の壁に掛けられそうな風貌をしている。そこから繋がるのだろうか。『クリオネ』の戯曲をはじめて読んだ印象も「言葉の音」だったと手塚さんは言う。 読んでると内容が入ってくるじゃないですか。でも、人は音で聞くと内容ではない、違うものが入ってきたりしますよね。例えば今回だったら光景や光の影や風景など音としては一緒なんだけど…。それが耳にはいってきた時どう気持ちよく響かせるのか、雑音にするのか、常に<なにかしらお客さんに引っ掛からせる事>を意識してます。やはり読んでるのと実際声に出すのは別物なので今、悪戦苦闘中です…。 −その手塚さんの悪戦苦闘っぷりは、稽古場で演技の進化として現れる。毎回、角度を少しずつ変えて常に新鮮な演技を提示する手塚さんの演技っぷりは、物語の鍵を握る首塔役として言葉以上の存在感を発揮する。その演技を観ていただくお客さんに一言お願いします。 そうですね。非常に欠落している人がいっぱいでてくるお芝居ですが、多分観ている人も色んなところが欠落してたりして、それが“痛み”だったり、あるいは“希望”だったりしてるんだと思います。欠落している人間は皆、どうバランスをとろうと考えている、その姿が美しいし、そこを見ていただきたいと思います。それは首塔だけではなく登場人物全員が抱えているものでもあるので。 * 『クリオネ』が放つものは、現代で生きる人々の闇なのか光なのか。その答えを解明していただくためには、まず作品を観ていただくしかない。手塚さんは、劇場でどんな風に楽譜を読みどんな音色を客席へと響かすのだろうか。ご期待ください。 |
手塚 とおる PROFILE 1983年2月「黒いチューリップ」 |
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インタビュー企画まだまだ続きます。 宮本裕子さん、ルー大柴さんへのインタビューも近日UP予定! 川村毅、作・演出『クリオネ』 お楽しみに!! |
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クリオネ公演情報 |
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